糖尿病は、症状のない病気です。知らないうちに病気が進んでしまいます。
「のどが渇く」、「水をよく飲む」、「おしっこの量が多い」この3つが糖尿病の特徴的な症状ですが、これらが現れた時にはすでに糖尿病はかなり進んでしまっています。
そんな見えない糖尿病のもとで、さらに知らないうちに進んでいるのが糖尿病性腎症です。
糖尿病になると、次第に腎臓がいたんできます。
これは 小さな血管がいたむのが糖尿病の特徴で、その小さな血管が多い臓器の代表が腎臓だからです。
腎臓は、血液から老廃物を漉(こ)し取り、おしっことして排泄します。小さな血管が集まって緻密な構造を作っています。
糖尿病腎症は漏れてくる蛋白の種類や量、腎臓の機能低下の大小により第1期から第5期まで分けられています。
そして一番の特徴は、糖尿病になった時点で「糖尿病性腎症 第1期」と診断されることです。
このあたり、腎臓専門の先生が「糖尿病の患者さんは腎臓がいたんでいないかよく注意してくださいね」とメッセージを送っておられるような気がしています。
また、腎症は基本的に病気が進んでしまうと元に戻りません。
ですので、腎症が進んだらできるだけ早くそれを見つけて、それ以上腎症が進まないように血糖コントロールを良くする必要があります。
糖尿病性腎症は病気の進み具合によって5段階に分けられています。
分かり易く説明するために、一番病状が進んだ第5期から順に第4期、第3期・・・と説明していきましょう。
第5期(透析療法期)
腎臓の機能が落ち、機械を使って老廃物を身体の外に出す時期です。
これを透析療法(人工透析)と言います。透析には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類がありますが、その内容は今回の趣旨とそれてしまいますので別の機会に。
透析となると、週に3~4回、1回3~4時間程度、透析を受けなければいけなくなります。なかなか旅行に行けないなど生活に制限がかかってしまいます。
透析を受けられている患者さんのご苦労を拝見していると、できるだけ透析を受けないように、あるいは透析になる時期を遅らせるよう、早めに腎臓の合併症を確認して対策をとる必要があると痛感しています。
そのためには、早めに腎臓の専門医の先生に相談することの大切です。
当院では、腎臓の合併症の有無をこまめに診させていただきます。
そして患者さんには必要に応じて腎臓の専門の先生を受診いただき、専門の先生からご助言を頂こうと思っています。
腎症第4期(腎不全期)
これも、糖尿病性腎症がずいぶん進み、腎臓の血管がいたんでしまって血液を漉(こ)しとる機能が非常に落ち込んでいる状態です。
腎臓が血液から老廃物を漉(こ)しとる量を「糸球体濾過(ろか)量」といいます。
血液を漉(こ)しとる部分は、細い血管がちょうど糸の球のような形をしているので「糸球体」と言います。それが老廃物を濾過する量が「糸球体濾過量」です。これは血液検査をすることである程度分かります。
この機能が非常に落ちてしまっている状態です。
具体的に数値を出すと、糸球体濾過量:GFR(eGFR) 30未満 ml/分/1.73m2です。
この第4期から、透析が始まる第5期に進んでしまうのを腎臓専門の先生の助言を受けながら食い止める、あるいはできるだけ遅くすることが大切です。