甲状腺から、勝手に甲状腺ホルモンが放出されてしまう病気です。 

(自動読み上げ その1)

(原因)

食べ物などが原因で発症するわけではなく、遺伝的な素因にストレスなどの環境要因が加わって発症するようですが、詳しい原因はわかっていません。

女性に多い病気で、20代後半から発症することが多いです。

(症状)

症状として、動悸がする、汗が多い、体重が急激に減る、手が震える、すぐ疲れる、症状が進んでくると、軽い興奮状態になる、などがあります。

(何が起こっているか)

通常は身体に入ってきたばい菌などを攻撃する免疫が、間違えて甲状腺刺激ホルモンの受容体を攻撃するため、甲状腺が、甲状腺刺激ホルモンが甲状腺ホルモンを出すように命令していると勘違いして甲状腺ホルモンどんどん放出してしまいます。

このため、通常は甲状腺ホルモンが出すぎると、脳が感知して甲状腺ホルモンをたくさん出さないように命令が出るのですが、この命令が効かなくなっています。

この結果、代謝が盛んになり、上述のような動悸がする、手が震える、どんどん痩せていく・・・などの症状が起ります。

代謝という言葉が分かりにくいと思いますが、これがあまりに盛んになるということは、一日中ずっとマラソンをしているようなことになります。怖いのは、心臓に負担がかかりすぎてしまうことです。

(自動読み上げ その2)

(バセドウ病が原因でおこる病気)

心臓の脈が乱れたり(不整脈といいます)、心不全と言って心臓の疲れ切って全身に血液を送る力が弱くなってしまいます。 そうなると、命にかかわってきます。

特にバセドウ病から起ってくる不整脈は「心房細動」といって、心臓の中に血液の固まりができ、それが心臓から血管を通って流れ出て脳に向かう血管を詰まらせてしまうことがあります。この病気が「脳梗塞」です。

(治療)

どの病気もそうですが、早めに正確な診断を行い、治療を開始することが大切です。

バセドウ病の原因は、免疫が甲状腺を間違って攻撃していることです。

治療は大きく分けて3種類ありますが、どれもその原因に作用するわけではなく、結果として出過ぎている甲状腺ホルモンの量を減らすことが目的です。

甲状腺ホルモンの量を抑えてじっと待つことで、免疫が甲状腺を攻撃する力が弱くなるのをじっと待つ戦略です。

ちょうど、風邪をひいて熱が出たら解熱剤を飲んで発熱を抑え、風邪が治るのをじっと待つのと同じです。

まずは飲み薬での治療を検討しますが、必要に応じて甲状腺の一部を取る手術をするなど、ほかの治療法を行うことがあります。

(自動読み上げ その3)

1. 薬の内服:抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジール)

甲状腺から甲状腺ホルモンが出過ぎないように、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。多くは1~2年で薬を中止することができます。

手術と比べると身体に大きな負担をかけることはありませんが、長く飲み続けなければならない場合があること、免疫をつかさどる白血球が極端に減ってしまうこと(無顆粒球症)や肝臓が傷むなど重大な副作用がでることが少なくはないのが欠点です。

少しずつ薬を減らしていき、だいたい2年で薬をやめられる方が多いです。

メルカゾールはよく効く薬ですが副作用の頻度も高く、あまり長く飲むのはお勧めしません。5年以上内服が続くようなら、下に書いた外科治療(甲状腺摘出術)や放射線治療を受けられるとよいでしょう。

2. 外科治療 

手術の跡が残ったり(ほとんど分かりませんが)、まれに声が出にくくなったりすることがありますが、効果が早くて確実性の高い治療法です。

抗甲状腺薬が使えない、あるいは放射線治療を希望されない患者さんに行われます。

3. 放射線治療 

カプセルに入った放射性ヨウ素を1回だけ飲む治療です。

放射性ヨウ素が甲状腺の集まり、甲状腺の細胞を壊すことによってバセドウ病が改善します。

放射能をもつ薬を飲みますが、バセドウ病の治療で胃がんや白血病が増える、あるいは期間を開ければ妊娠に影響があるという報告はありません。