首の下のほう、男性なら喉ぼとけの下あたりで分かり易いのですが、甲状腺というものがあります。代謝に関係する大切なホルモンが作られています。
甲状腺で作られて血管を通って全身に行き渡るので、甲状腺ホルモンと名付けられています。
これが多すぎると、代謝が活発になり、動悸や息切れ・体重が減るなどの症状が出てきます。症状が進むと心臓に負担がかかり、命にかかわってきます。
甲状腺の機能が進みすぎてしまっているので、甲状腺機能亢進症といいます。病気の発見者の名前を使って、バセドウ病と呼ばれることもあります。
逆に、甲状腺の機能が落ちてしまうと、代謝がゆるやかになりすぎて、体がきつかったり体重が増えてしまったりします。
甲状腺の機能が低下しているので、甲状腺機能低下症といいます。これも、病気の発見者の名前を使って橋本病と呼ばれることがあります。
◇
1) 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺から勝手に甲状腺ホルモンが作られてしまう病気です。
通常は甲状腺ホルモンが出すぎると、脳が感知して甲状腺ホルモンをたくさん出さないように命令が出るのですが、この命令が効かなくなっています。
この結果、代謝が盛んになり、動悸がする、手が震える、どんどん痩せていく・・・などの症状が起ります。
代謝という言葉が分かりにくいと思いますが、これがあまりに盛んになるということは、一日中ずっとマラソンをしているようなことになります。怖いのは、心臓に負担がかかりすぎてしまうことです。
心臓の脈が乱れたり(不整脈といいます)、心不全と言って心臓の疲れ切って全身に血液を送る力が弱くなってしまいます。そうなると、命にかかわってきます。
また、甲状腺ホルモンは、体がいつでも運動をできるように準備する働きもあるため、血糖値が上昇することがあります。糖尿病で治療を受けておられる方も、一度は甲状腺ホルモンを測った方がよいでしょう。
どの病気もそうですが、早めに正確な診断を行い、治療を開始することが大切です。
まずは飲み薬での治療を検討しますが、必要に応じて甲状腺の一部を取る手術をすることがあります。
◇
2)甲状腺機能低下症 (橋本病)
甲状腺のホルモンが作られにくくなっている病気です。
人間の体は常にいろいろなものが合成されたり、分解されたりしています。
これがとどこおってしまうと、不用なものが体のいたるところにたまってしまいます。
また、体で物が作られる量が減るので、材料が余ってしまいます。代表的なものがコレステロール(脂質)です。脂質異常症(高コレステロール血症、高脂血症、高中性脂肪血症)で治療中の方は、一度は甲状腺ホルモンを測った方がよいでしょう。
あるいは、代謝が悪くなるので体重が増えることがあります。この結果、血圧が上昇して高血圧症になることもあります。急激に体重が増えた場合も、一度は甲状腺ホルモンを測定されることをお勧めします。
前回の甲状腺機能亢進症でもお話しましたが、心臓は甲状腺の機能が進んでいても、低下していても悪い影響が出ます。
甲状腺機能低下症でも心臓に負担がかかり、寿命が短くなると言われています。
足りない甲状腺ホルモンを飲み薬で補って、適度な量に調整しておくことが大切です。
甲状腺が非常に大きくなることがあるため、美容的な意味で一部を手術で取ることがあります。