腎症第3期(顕性腎症期)

よく、「おしっこから蛋白が出ると良くない」とお聞きになると思います。

腎症第3期は、この「おしっこから蛋白が出ている」状態です。おおまかに、腎臓から1日にタンパク質が0.5g以上漏れています。検尿をすることで分かります。

健康な方でも、タンパク質が少し漏れ出ることがありますが、本来おしっこに含まれないタンパク質が出ているということは、腎臓の精密な構造が一部壊れていることをあらわします。タンパク質の量が増えるということは、それだけ壊れている範囲が大きいことを意味ます。

もう一つ、腎症第3期では尿中微量アルブミンというのも1日300mgほど漏れていますが、これはまた次回に。

蛋白が漏れていなくても、腎臓が老廃物を漉(こ)し取る量(糸球体濾過量)が減っていることもあります。つまり、腎臓の機能が落ちている可能性があります。

これは、採血をすることにより、糸球体濾過量がどのくらい下がっているかを調べます。

腎症第2期(早期腎症期)

早期腎症期とあります。その名の通り、腎症が少し進んだ状態です。

おしっこからタンパク質は出てきていませんが、アルブミンというのが1日にだいたい 30~299mg出ている状態です。

検尿ではタンパク質がマイナスですが、腎症が少し進んでいます。

ここでとてもとても大切なのは、第2期は血糖コントロールを良好にしておくと、第1期に戻るかもしれないことです。

検尿でおしっこからタンパク質が出ていなくても、尿からアルブミンが漏れてきているかもしれません。

ここを見逃していると、第3期で検尿でタンパク質が陽性になり、ようやく腎症が見つかったころにはもう腎症が回復することがなくなってしまう・・・そんなことになりかねません。

ここでアルブミンの説明をしておきましょう。タンパク質というのは、アミノ酸が数多くつながった塊です。アルブミンは、タンパク質より少ない数のアミノ酸がつながった塊で、タンパク質より少し小さい塊です。


さて、刻んだキャベツを洗って、ざるにいれて水を切るところを想像して下さい。
最初、野菜くずは漏れていきません。ざるが少しいたんで、網目がの一部が大きくなると、小さな野菜くずが漏れてくるでしょう。この小さな野菜くずがアルブミンです。ざるがもう少しいたんで、網目の一部がさらに大きくなると、もっと大きな野菜くずが漏れてきます。これがタンパク質です。


つまり、糖尿病で腎臓の血管(ざる)がいたむと、最初に漏れてくるのがアルブミン、もっといたんだら次がタンパク質です。アルブミンはより早く、腎症が進んでいないかを見る指標として使えます。

腎臓の血管がいたんでくると、網目の一部が大きくなってしまいます。そこを通ってくるのがアルブミンでした。

さらに腎臓の血管がいたむと、網目の一部がさらに大きくなります。そこを通るのがタンパク質でした(タンパク質が網目を通るようになると、腎症第3期に分類されます)。

ざるの例えに戻りますが、大きくなった網目を野菜くずが通ると、通るときに網目にぶつかるので、そのせいで網目がさらに大きくなってしまいます。悪循環ですね。

腎症が進む原因は、血管がいたむことだけではなく、アルブミンやタンパク質が網目を通り抜けることもでもあります。アルブミンやタンパク質が漏れ始めたら、腎症がどんどん進んでしまうことになりかねません。

ですから、たとえHbA1cが7.0%未満でも、検尿だけではなく時々尿中アルブミンを測定して腎症の進み具合を確認しましょう。アルブミンが漏れてくるようなら生活を一度見直す必要があります。早期に腎症に対応しないと、どんどん病期が進むことになってしまいますから。

ただ、幸いアルブミンが漏れはじめた初期なら、血糖を良くするなど生活を見直すとアルブミンが減って腎症第1期にもどるのではないかというデータもあります。

補足:アルブミンが漏れて来ずに腎症が進むこともあります。ですから、腎臓が老廃物を漉(こ)し取る機能(糸球体濾過量)も採血して定期的に測っておくのも重要です。

腎症第1期(腎症前期)

この第1期には、腎臓病学会の重要な、そして切迫した意図が含まれる気がします。
腎臓病第1期  正常アルブミン尿 ・・・ 正常なのです。

尿から出てくるアルブミンの量は30mg/g・Cre未満となっています。健康な方でも少量のアルブミンはもれてくるものです。

通常、病気の進み具合の分類は異常値がでてから1期として始まります。

ところが、糖尿病性腎症は、糖尿病にかかった時点で第1期が始まっているのです。

糖尿病と言われたら、腎臓が悪くなるんですよ、だから糖尿病にかかった時点で腎症が始まったと思ってください、そしてしっかり腎臓の状態を定期的に見てもらってください・・・そんなメッセージが含まれているような気がします。