糖尿病性腎症 ~ 「見えない」糖尿病の「見えない」合併症 (7)
過去6回のまとめです。
糖尿病を治療する理由は、全身の血管がいたんでしまうからです。大きな血管がいたみ、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす原因になります。
また、糖尿病の特徴は、大きな血管だけではなく小さな血管もいたんでしまうことです。
小さな血管があるのは目、腎臓、神経です。ここにある血管がいたむので、それぞれ網膜症、腎症、神経障害を引き起こします。これを「糖尿病の三大合併症」といいます。
今回は腎症について記載しています。
腎症の進み具合を、一番進んだ第4期から記載してきました。一通り説明が終わったので、まとめでは通常の順番、第1期から復習したいと思います。
第1期(腎症前期)
腎臓にまだ影響が出ていない段階です。なのに糖尿病性腎症に含まれます。病気ではないのに病気・・・矛盾しているように思えますが、糖尿病では腎障害が進んでしまうので、糖尿病になった時点で腎臓がいたんでしまう前提でしっかり検査をして腎臓が傷まないようにすることが大切だということでしょう。
第2期(早期腎症期)
腎臓がいたみ始めた時期です。タンパク質よりも小さい、アルブミンというものがおしっこから漏れてきます。本来アルブミンは腎臓から漏れておしっこに出てきません。しかし、まだ腎臓の痛みは軽いので状態によっては第1期に戻ることもあると考えられています。
アルブミンは検尿では分からないので、特別に測る必要があります。定期的に測定をして、腎症が始まっていないか確認しましょう。
アルブミンが漏れてこなくても、腎臓が血液から老廃物を漉しとる量(糸球体濾過量)がある程度減っても、第2期に含めます。
第3期(顕性腎症期)
アルブミンより大きなタンパク質が腎臓から漏れておしっこに出てきます。
腎症がより進んだことを表します。
検尿でタンパク質が検出されます。
アルブミン・タンパク質はそれが腎臓から漏れてくることで、腎臓の構造を壊してしまい腎症が進む原因となります。
一度、腎臓の専門の先生を受診して、アドバイスをいただく時期です。
第4期(腎不全期)
腎臓の機能がかなり落ちている時期です。
これ以上悪化すると、人工透析が必要になります。腎臓の専門の先生と協力して、透析を開始する時期を何とか遅らせる必要があります。
第5期(透析療法期)
腎臓の機能が落ちてしまい、自分ではおしっこを出せない、つまり老廃物を排出できなくなってしまった時期です。
人工透析を受けて、機械の力で老廃物を体外に排出します。
透析には時間がかかるため、生活に様々な制限がかかってしまいます。